2021/11/14
syrup16g『delaidback』独り言レビュー その1の続きです。
8.upside down
イントロのベースにやられます。この曲に限りませんが、delaidbackではマキリンが大爆発してますよね?爆ぜてますよね??
もう、誰が何と言おうと、syrup16gはマキリン抜きでは語れません。大好きです、マキリン。本人は激渋ミドルなのに、皆からマキリンって呼ばれてるのも可愛すぎます。
upside downも、解散前のライブで披露されていた人気曲らしいですが、ニトロは初聞き。サビのJ-POPっぽさが爽快で、つい笑いそうになります。これ、ほんとにsyrupの曲?って聞きたくなると同時に、syrupにしか作れない!とも思える不思議な曲。五十嵐さんが時折表現する、独特なPOP感が大好物です。最後の「絶望へ」って歌い方も最高(語彙力)。
ライブで歌うのが大変そうな曲ですが、五十嵐さん、ちゃんと歌えるかなぁ-?なんか、この曲はめっちゃ歌詞飛ばしそうだなと思っちゃいます(失礼な)。
9.ラズベリー
生還曲シリーズ。5曲あった生還初披露曲(透明な日、ヒーローショー、冴えないコード、ラズベリー、真夏のターンテーブル)のうち、何故かターンテーブルだけ省かれた恰好です。
ニトロは透明な日が断トツで好きで、残り4曲については優劣なく横並びの印象を持っていましたが、ラズベリーは特に捉えどころがない曲だったので、当初は「ラズベリーも収録されるのかぁ」と、少し意外でした。
でも、何度も聴くうちに徐々にハマってきて、今では「早くライブで聴きたい!」と待ちわびている状態。
女性が歌っているかのような、五十嵐さんの「踊るわ」「祈るわ」って言葉遣いに、ただならぬ色気を感じます。こんな話し言葉の歌詞って、今までにあったかな?ぱっと思いつきませんが・・。ラズベリーってタイトルからして、五十嵐さんの乙女チックさ全開です。
「壊せるようにつくる、終われるように始める」の歌詞は、始まりの時から終わりを見据えている、五十嵐さんの思考の癖を端的に表現していて唸らされます。
メロディアスなベースが格好良いので、ライブではマキリンに釘付け間違いなし!!アウトロを聞いていると、ライブでギターを掻き鳴らす五十嵐さん、ドラムを叩きまくるダイキちゃん、グネグネしたベースを弾くマキリンの絵面が思い浮かびます。最後の瞬間は、3人が視線を合わせてピタッと終わるんだろうなぁ(^-^)
10.開けられずじまいの心の窓から
初期曲です。これは、当時のsyrupライブに行っていた人だけが知っている、超レア曲って位置づけで合ってるのかな。
曲調も歌詞も「すごくsyrupっぽいなあ」ってのが第一印象。やはり、昔から五十嵐さんのソングライティング力は突出しています。
syrup16gの曲は、無駄がないのがすごい。特に、ライブで如実に実感するのですが、イントロ~間奏~アウトロまで、必要十分な音だけで構成されていて、全く冗長にならないのです。
余談ですが、解散時のロッキンオンジャパンインタビューで、五十嵐さんが「フェイドアウトの曲、シロップはたぶん一曲もないと思う」と話していたのが印象に残っていて、syrupの曲を聴く時はいつもアウトロが気になるのですが、本当に、どの曲もどの曲も、すべて綺麗に音を鳴らし切って終わっています。「五十嵐さんって一貫してるなー」と、変なところに感心してしまう。
フェイドアウトしない理由については「永遠に終わらないで続いていくみたいな。いつも終わらないで欲しいと思っちゃうんですよ。だからフェイドアウトしないんです」と語っていました。
11.4月のシャイボーイ
歌詞カードを見ないと何を歌ってるか分からない、空耳アワー度ナンバー1の曲ではないでしょうか。
サビで繰り返される「なんもいいことがねえ」ってパワーワード。めちゃくちゃ汎用性が高そうな名言をいただきました。音は明るめでギターもキラキラしてるので、余計に歌詞とのギャップがあります。
12.変拍子
一聴した時の印象は「じっくり聞くうちに、染み込んでくる類いの曲かな」でしたが、いや、即効性ありました。めっちゃ好きです。曲が転調する部分の歌詞とメロディが秀逸。
「愛の匂いを覚えているかい かりそめの」って・・(言葉が続かない)。「分かりあえた日々が 眩し過ぎて 見れないだけ」っていうのも・・。五十嵐さん自身が、こんな気持ちで過去を振り返っているのかな~と想像すると、胸が痛くなります。
分かりあえた日々があったのかな、理解者がいてくれたのに、今はいなくなってしまったのかな。。
歌詞がいつ書かれたのかは不明なので、単純に現在の心境とリンクしているとは限りませんけども、普遍性のある歌詞ですよね。
13.光なき窓
変拍子からの光なき窓はズルいです。
もしかしたら、delaidbackで一番好きな曲かもしれません。『光のような』も大好きなので迷うところです。両方とも光繋がりですね。
アルバムの最後に光なき窓を持ってこられると・・非の打ちどころがありません。
どことなくアイリッシュな雰囲気のギターイントロが聞こえてきただけで苦しいのに、五十嵐さんの「少年時代は~」で始まる歌声で追い打ちをかけられて「そばにいてくれ ふらっと隣に」で涙腺刺激されて、最後の「光なき窓」のシャウトで号泣です。
条件反射で涙が出てくるので(特に車中は危険)、今のうちから耐性をつけておかなければ!と危機感を持ってます。でないと、ライブで洒落にならない醜態をさらしてしまいそう^_^;
なんなんだ、この人は、本当に、なんで、こんな曲が、こんな歌詞が、作れるのだろう・・。
ニトロがsyrupファンだから、こんなに感動してしまうだけなのかなぁ?syrupを知らない人が、この曲を初めて聞いた時に、何とも思わずにいられるのかなぁ??
音楽の趣味って、人に強要されて変わるものではないし、生まれ持った感覚が大きい分野だと考えていますが、五十嵐さんの作る曲が、ことごとくニトロの音楽的嗜好にドンピシャなのでしょうね、きっと。
『光なき窓』の歌詞の中では、特に最後の
もう 満ち足りた日々は遠くて
真っ直ぐ 鏡も見れなくて
が、胸にきます。過ぎ去ってしまった日々への憧憬や、現在の状況のままならなさを、ここまで平易な言葉で、なおかつ的確に表現できる五十嵐さん。凄いとしか言いようがありません。
以上、独断と偏見に満ちた自己満足の独り言レビューでした。まだまだ書き足りないので、その都度ちょこちょこ追記するかも^_^;
今回のアルバム『delaidback』は、再始動以降に発表された音源とは、そもそもの成り立ちからして異質なので、同列では語れない作品だと考えています。
『光のような』や『赤いカラス』は、犬が吠える時代から考えると9年前からある曲ですし、Star Slaveやupside downなんて、それ以前の話です。生還曲ですら、4年以上経過してます。それだけの期間、それぞれが自分の中で曲への想いを育んでいて、思い入れも強くなっているところへ、ようやく届いたアルバムですから、高評価なのは当然といえば当然かもしれません。
「死ぬまでに一枚のCDしか聞けないとしたら、どれを選ぶ?」と問われたら、今のニトロは間違いなく『delaidback』と答えます。それくらい、このアルバムが好きです。
でも、本当に『delaidback』が凄いのは、皆が待ち焦がれた名曲たちのみならず、それらにも負けず劣らずの、無名の曲たちによって下支えされているところ。
そして、どれだけ昔の曲であろうとも、今の、2017年のsyrup16gが鳴らしてくれている事実、これが一番大事なのかなと。年代を問わず、全ての曲を作り出したのは紛れもなく五十嵐さんだし、演奏しているのはsyrup16gの三人です。
「30代行くまで生きてんのか俺」と歌っていた五十嵐さんが、44歳になって歌う力強い歌声、変わらず美しいギターの音色、出来た嫁ダイキちゃんの力強くタイトなドラム、マキリンのテクニカルで熱いベース。2017年に、このアルバムを私達に届けてくれた。その事実を、今は素直に喜びたいです。