2021/11/14
2月に予定している東京行き、ラスコー展とobさんの個展が楽しみなのは当然ながら、実は「絶対行こう」と即決した一番の理由は、青木雄二さんのナニワ金融道原画展でした。
Kaikai Kiki Galleryと同じく、村上隆氏が経営する中野ブロードウェー内のpixiv Zingaroで開催される展覧会では、なんと原画約100点が一挙展示されるらしい!ニトロが知らないだけかもしれませんが、青木雄二さんの原画展を見聞きしたのは今回が初めてです。この機会を逃すと一生後悔しそうなので、何を置いても行かなければ!なのです。
ニトロは、青木雄二さんのナニワ金融道全10巻を持っています。
いわゆるサラ金の世界で、酸いも甘いも知り尽くした登場人物たちの立ち回りが魅力的で、何よりも勉強になります。3年ほど前、増え続ける書籍を整理した際に結構な量の雑誌や文庫本、漫画を手放したのですが、それでも売らずに残った漫画がいくつかあって、ナニワ金融道はそのうちの一つです。売ることは全く考えませんでした。手塚治虫のブラックジャック、山岸凉子の日出処の天子、羽海野チカ作品など、今後も手元に置いておきたい漫画がありますが、ニトロにとってはナニワ金融道も同列で、折に触れて繰り返し読みたくなる本です。
どのエピソードもそれぞれに強烈ですが、広島県人のニトロとしては、地上げに失敗して夜逃げをした人物が広島空港の割安チケットを分売する商売を思いつき、実行していく話が特に面白かったです。牧歌的な時代だからこそ成り立っていたわけで、今では考えられない商売です。でも、あのバイタリティ溢れる人物なら、現代でもインターネットを使いこなして時代に即した商売を考えつくのだろうな。
もう一つ、商品先物取引の怖さを知るきっかけとなったのが、先物取引会社の営業をかけられた小学校の教頭先生が、ほんのはずみから手を出して破滅に向かうエピソードです。金銭だけに留まらず、社会的身分を失うまで寄ってたかってカタに嵌められる様子は、簡単に儲けられますなんて甘言に乗って先物取引に手を出せば、待っているのは地獄なのだと肝に銘ずるには十分な威力でした。
偏執的とも言える書き込みが青木雄二さんの漫画の特徴ですが、読むたびに発見があるので何度読んでも飽きません。お金の恐ろしさだけでなく、有り難さまでが全身に沁みわたる読後感は、他ではなかなか味わえない感覚です。
ナニワ金融道を読むと、何かから逃げたり隠れたりせずに真っ当に往来を闊歩できる、それだけで物凄く有難い生活なのだと、つくづく実感します。
当然と思ってしまいがちだけど、決してそうではないのです。
普段の生活では、足りない部分ばかりが目について自分の境遇を嘆きがちですが、実際はお金を出しても買えないほど恵まれた環境にいたのだと、それは年齢を重ねて、様々な人生を見聞きしたからこそ分かる経験知なのかもしれません。
ニトロだって、いつどうなって、ナニワ金融道の世界の住人になっていたかもしれませんし、今後も絶対にならないとは限りません。
ほんの出来心から身の破滅を招いた教頭先生のように、明るく正しい道を歩んでいるつもりでも一寸先は闇で、ふとしたキッカケで転落する落とし穴はそこかしこに仕掛けられています。
今日まで大過なく生きてきたのが自分一人の力だと勘違いしていたら大間違いで、多くの人達に支えられて、手をかけてもらって、ようやく半人前になったかどうかのニトロなのです。
登場人物たちのバイタリティに勇気をもらったり、反面教師にしたり、漫画形式で分かりやすいのに世の中の表と裏を鮮烈なまでに炙り出した社会派漫画の金字塔、ナニワ金融道。
原画展、楽しみにしています!!