2021/11/14
ニトロはどちらかというとネットカフェ派なのですが、妹2はちょくちょくレンタルコミックを利用して漫画を借りています。
先日も、妹2と一緒に出かけた時に「10冊借りたら安くなるんだけど、ニトロも読みたい漫画あったら一緒に借りてあげるよ」と言われたので、それならと本棚から選んだのが、表題の漫画『一の食卓』です。
現在もメロディにて連載中。おめかしした着物姿の明ちゃんが可愛らしい。
樹なつみさんといえば、少女漫画の枠に留まらない生粋のストーリーテラー。
新連載のたびに「よくこんな話を思いつくよな~」と感心してしまいます。
物語が単線ではなく、複線構造なのですよね。単純な色恋沙汰では終わらない壮大なスケール感で、煌びやか、華やかなキャラクターが躍動するのが特徴です。それでいて、ちゃんと少女漫画的胸キュンも忘れない、とても好きな漫画家さんです。
もしも「希望した漫画家さんの絵を描けるようにしてあげるよ、誰を選ぶ?」と言われたら、羽海野チカさんやいくえみ綾さんとも迷うけど、くらもちふさこさんの男性キャラも捨てがたいけど、井上雄彦さんなんてヤバいくらいかっこいいけど、樹なつみさんでお願いします!と頼みたいくらいに、樹さんの描く男性キャラ、特に横顔のラインがカッコよくて好みなのです。
全作品読破するほどの熱心な読者ではありませんが、樹作品では『花咲ける青少年』『八雲立つ』『OZ』『獣王星』『デーモン聖典』『ヴァムピール』を読んでいます。他のエントリにも書きましたが、今まで読んだ漫画の男性キャラで一番カッコいいと思うのは八雲立つの闇己くんです^^
樹キャラと言えば、ものすごく端正で格好良いのに恋愛(と言うより人間?)に無頓着な、ツンデレとも言えないツンツンの男性がお約束ですよね。
一の食卓では、もちろん主人公の藤田五郎こと斎藤一がその役どころです。
連載が始まると知って「樹さんの新選組ものなんて!一体どんな話かしら」と楽しみにしていたら、やはり切り口が普通じゃありませんでした。
舞台は東京築地、江戸幕府が倒されて数年後の明治時代。急速に西洋文化が広まるなかでも、まだまだ旧来の慣習が幅を利かせています。
上野戦争によって両親を亡くしながらも、異国の料理人フェリさんに拾われて、フェリパンで働いている主人公の西塔明(さいとうはる)。
まず、明ちゃんの健気さ、優しさ、そして強さが魅力的です。斎藤一から藤田五郎と名を変えて、世を忍んで生きる一匹狼でさえ、明ちゃんには一目置く様子が伺えます。明ちゃんの命の恩人が原田さんというのもニクい演出!
侍萌えのフェリさんも良いキャラですし、フェリさんと明ちゃんの関係性は、師匠と弟子以上の縁を感じさせます。
明ちゃんが手間暇かけて美味しい食事を作るのを見るにつけ、こんな子に生まれたかった・・と羨ましくなります。レシピがあれば料理は作れるけど、どの世界にも言えるように料理にも間違いなくセンスってありますから、類まれなるセンスに恵まれた明ちゃんが、料理で以てして人の心を掴んでいく様子は、料理音痴のニトロにとっては魔法にしか見えません。
今はまだ回想場面でしか新選組の主要キャラ(近藤さん、土方さん、沖田総司)は出ていませんが、4巻では昔メインの話も掲載されているみたいなので、読むのが楽しみです。現在は最新4巻まで出ているので、また続きを借りるかネットカフェで読もうっと。
追記:4巻読みました→樹なつみ『一の食卓』4巻感想
新選組漫画といえば、渡辺多恵子さんの『風光る』も読んでいますが、あちらはかなりの長期連載です。下手したら20年とか経っているのでは・・と確認してみると、1巻の発売は1997年10月でした!まさに今年、連載20周年ではありませんか。そろそろ物語も終盤に差し掛かってはいますが、一体どんな終わりを迎えるのでしょうか。
沖田総司とセイちゃんのロマンス、史実上どう足掻いても総司の死は覆りませんけど、ここまで引っ張ってるわけですし、ちゃんと二人の気持ちが通じ合わないと読者は納得できませんよね。
セイちゃんは、どんな形で総司と添い遂げるのか。楽しみだけど、単純なハッピーエンドはあり得ないと分かっているから、余計に怖い気もします。
話は『一の食卓』に戻って。
その時々のミッションはあるものの、物語全体の明確なエンドマークをどこに設定しているのか、現時点では読者に分かりません。
たとえば『花咲ける青少年』なら花鹿のお婿さん探し、『八雲立つ』なら神剣集めて念を昇華させるなど、何かしらのゴールや目的がありました。
『一の食卓』で、ヒロインの明ちゃんは立派な料理人になると意気込んで頑張っていますが、五郎さんはフェリパンを隠れ蓑にしつつ密偵をしている様子しか描かれていません。ここからどうなりたいとか、野心を見せるわけでもないですし。
旧来の価値感がひっくり返ってしまって、時代に置いていかれた、特に男性の悲哀を感じる場面は切なかったです。どれだけ昔を懐かしんでも後戻りはできない。時を逃せば、死にぞこないとして生きる意味さえ見失ってしまう。
原田さんは、戦果を逃れた妻子の居場所を突き止めながらも、既に新しい旦那と暮らしていると言われて自分の存在を消すしかできなかったり。だからこそ、死ぬなら昔の仲間の手にかかって死にたいと五郎さんに勝負を挑んだり。
でも、ここでも明ちゃんが良い仕事をするのです。明ちゃんにとって、原田さんは命の恩人。なんとしても元気づけようと、両親を亡くした日以来作らないと決めていた和菓子を、原田さんのために作るのです。
もうね、良い子すぎる。原田さんも、ここから生きる意味を探して、また良い女の人を見つけて幸せになってほしいな。
現在では、当たり前にカンパーニュやフランスパンなど固いパンを食べますが、ほんの少し時計を巻き戻せば、今とは全く違う風景が広がっていたのだなぁと考えると感慨深いですね。
タイムスリップして、現代日本の食卓をフェリさんや明ちゃんが見たら、どれだけ喜び、驚くかしら^^